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こんにちは。当院のブログをご覧いただきありがとうございます。
「上顎のインプラントをしたいけれど、上の奥歯の骨が足りないと言われた……」
「鼻の空洞(副鼻腔)にインプラントが突き抜けてしまうのが怖い」
このような不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
上あごの奥歯エリアは、もともと骨の厚みが薄いうえに、歯を失うとさらに骨が痩せてしまうという特徴があります。
今回は、最新の学術論文(Ragucci et al. 2019)のデータをもとに、「インプラントが鼻の空洞に突き出した場合に何が起こるのか」という興味深い研究結果を解説し、なぜ当院が安全な治療のために「サイナスリフト」をおすすめしているのかをお話しします。
1. 論文が明らかにした「インプラントと副鼻腔」の関係
今回ご紹介するのは、2019年に発表された「上顎洞(じょうがくどう:鼻の横にある空洞)にインプラントが露出した場合の生存率と合併症に関する系統的レビュー」という論文です 。
この研究では、骨が足りない場所に無理にインプラントを植立し、その先端が上顎洞内に突き抜けてしまったケース(約500本のインプラント)を長期的に調査しました 。
驚きの生存率
結論から言うと、意図せずインプラントが空洞に突き抜けてしまった場合でも、インプラントの生存率は約95.6%と非常に高い数値でした 。さらに、突き抜けた長さが4mm以下でも4mm以上でも、生存率に大きな差はなかったと報告されています 。
合併症のリスク
一方で、気になるのが体への影響です。
- 臨床的なトラブル(鼻血、蓄膿症など):発生率は約3.4%と低めでした 。
- レントゲン上の変化:約14.8%に上顎洞の粘膜が厚くなるなどの変化が見られました 。
特に、突き抜けた長さが4mmを超えると、レントゲン上の異常が見られる確率は約29.3%まで跳ね上がります 。
2. 突き抜けても大丈夫?
「生存率が高いなら、無理に突き抜けて植えてもいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、論文の著者らは慎重な姿勢を崩していません。
意図的な貫通は推奨されない
論文の結論では、「高い生存率を示しているものの、意図的にこの手法(骨を増やさずに突き抜かせること)を行うことは推奨されない」とはっきりと述べられています 。
理由は主に3つあります。
- 長期的な安全性が未確立:蓄積された汚れが将来的に重篤な上顎洞炎を引き起こす可能性が否定できないためです 。
- 粘膜の修復限界:インプラントが2mm以上突き抜けると、鼻の粘膜は自然にそれを覆うことができないとされています 。
- エビデンスの質:この研究結果の多くは過去の事例を振り返った「後ろ向き調査」であり、より確実性の高い「前向き調査」が不足しているためです 。

3. だからこそ、当院は「サイナスリフト」をおすすめします
骨が足りない場合に、安全・確実にインプラントを成功させるための正攻法。それが「サイナスリフト」です。
サイナスリフトとは?
上顎洞の底にある「シュナイダー膜」という薄い膜を優しく持ち上げ、その隙間に人工骨を補填して、十分な骨の厚みを作る手術です 。
サイナスリフトをおすすめする理由
論文でも触れられている通り、インプラントを長持ちさせるためには「十分な骨に囲まれていること」と「周囲組織(鼻の粘膜など)の健全性」が不可欠です 。
- インプラントの安定性:人工骨で土台をしっかり作ることで、インプラントがガッチリと固定されます。
- 感染リスクの低減:インプラントが空洞に露出しないため、将来的な上顎洞炎のリスクを最小限に抑えられます。
- 精神的な安心感:突き抜けた状態で過ごす不安がなく、ご自身の骨(または補填材)に守られた状態で安心してお食事を楽しめます。
まとめ
最新の研究では、万が一インプラントが副鼻腔に突き出しても、すぐに抜けてしまうわけではないことが分かってきました 。しかし、それはあくまで「トラブルが起きてしまった時のデータ」であり、最初から目指すべきゴールではありません。
当院では、患者様の大切なインプラントを10年、20年と守り抜くために、精密な診断に基づいたサイナスリフトをご提案しています。
「骨が少ない」と言われた方も、あきらめる必要はありません。まずはCT撮影を行い、あなたに最適な治療計画を一緒に立てていきましょう。お気軽にご相談ください。
参考文献 Ragucci, G.M., et al. (2019). Influence of exposing dental implants into the sinus cavity on survival and complications rate: a systematic review. International Journal of Implant Dentistry.

